老人ホームのサービスの医療費控除対象額

老人ホームで生活している高齢者の場合、施設で行われているサービスの対価として支払った金額のうち、一定の金額については所得税の医療費控除対象額になっています。控除できる金額は、どのような種類の老人ホームを利用しているかによっても異なり、あらかじめ確認が必要です。

ここでは老人ホームのどのようなサービスが医療費控除対象額になるのかを詳しく紹介します。

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医療費控除の対象となる居住費や食費

老人ホームにおける施設サービスの対価として支払った対価は、原則として所得税の医療費控除の対象となります。2005年から施行された改正後の介護保険法では、施設サービスの対価のうち、居住費と食費は介護保険給付の対象外になりましたが、そのかわりとして、それらの居住費と食費は医療費控除の対象になっています。

居住費と食費のうち、医療費控除の対象になる金額は、利用している施設によっても異なり、特別養護老人ホームまたは指定地域密着型介護老人福祉施設を利用している場合には、居住費と食費および介護費用のうち、2分の1に相当する金額が、医療費控除の対象になります。

介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設、介護医療院を利用している場合には、支払った居住費と食費および介護費用の全額が医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象とならない日常生活費

老人ホームのサービスの対価でも、医療費控除の対象とはならないものもあることから、控除額の計算をする場合には注意が必要です。対象にならないのは日常生活費と特別なサービス費用です。日常生活費とは、施設サービスとして提供されている各種の便宜のうち、日常生活において必要とされるもののために支払われる金額のことです。

それらのサービス費用のうち、老人ホームの入所者が負担するのが適当であると考えられている金額が日常生活費として、医療費控除の対象外になります。上記の費用に該当するものとしては、入所者の理容費や美容費があげられます。

医療費控除の対象となる紙おむつ代

老人ホームの入居者が支払う、日常生活の便宜のために支払われるサービス料の中でも、医療費控除の対象額になるものもあります。紙おむつの代金がその代表的なもので、紙おむつの費用は介護費用の中に含まれており、介護費は医療費控除の対象になることから、紙おむつ代も医療費控除の対象になります。

これらの代金のうち、自己負担した金額が医療費控除の対象になり、特別養護老人ホームまたは指定地域密着型介護老人福祉施設の入居者の場合には、2分の1の金額が控除の対象になります。

控除の対象となる特別な費用

老人ホームの入居者が支払う食費や居住費などのサービスのうち、特別なサービス費用に該当するものは原則として医療費控除の対象になりませんが、一定のものについては控除の対象になる場合があります。介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設または介護医療院の利用者で、個室などの特別室を使用している場合には、その分余計に必要になる費用も、医療費控除の対象になります。

ただし、この制度の適用を受けるためには、診療または治療を受けるために、個室を利用する必要があるという条件を満たしていなければいけません。プライベートな空間で生活したいなどの、診療や治療以外の目的で個室を利用する場合には、原則通り特別なサービスのための費用に該当することから、医療費控除の対象にはなりません。

控除を受けるために必要なもの

医療費控除制度を利用して、所得税から老人ホームの食費や居住費などを控除する場合には、それらの事実や金額を証明するための書類が必要になります。指定介護老人福祉施設などが発行する領収証がこうした書類に該当し、医療費控除の対象となる金額が記載されているものを保管することで、事実の証明ができます。

なお高額介護サービス費として一定の金額が払い戻された場合には、それらの高額介護サービス費を医療費の金額から差し引いた後の金額が、医療費控除の対象になります。この場合も、利用している施設が特別養護老人ホームまたは指定地域密着型介護老人福祉施設の場合には、差し引いた後の2分の1に該当する金額のみが医療費控除の対象額になります。

なお高額介護サービス費として支払った金額のうち、自己負担でないものについては、上記の規定の適用はないために注意が必要です。

未払金として処理された老人ホームの費用

所得税から控除することができる医療費控除の金額とは、納税者が所得税の課税対象期間になっている、各年の1月1日から12月31日の間に、医療費として支払った金額をいいます。控除することができる医療費は、自分の病気や怪我の治療のために支払った医療費だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族の治療ために支払った費用も含まれます。

そのために、老人ホームを利用している高齢者の場合、その費用を負担している生計を一にしている家族の世帯主も、医療費控除の制度を利用できます。なお控除の対象となる医療費には一定の要件があり、実際にその年に支払われた医療費の金額のみが、控除の対象となります。

例えば平成30年の所得にかかる所得税の場合、平成30年1月1日から12月31日までに支払った医療費だけが、平成30年の所得税の計算にかかる所得金額から控除することができます。

そのために老人ホームのサービスの対価として支払った食費や居住費のうち、請求時は未払金として処理されて、実際の支払いは翌年に行われた場合には、その金額は翌年分の所得税から控除できます。

医療費控除の上限

老人ホームの食費や居住費のうち、所得税から控除できる金額は、実際に支払った金額から、保険金などの支払いを受けて補填された金額を控除した後の金額です。そこから、さらに10万円を控除した後の金額が、最終的に所得から控除できる金額です。

ただし、その年の総所得金額等が200万円に満たない場合には、上記の10万円のかわりに、総所得金額等の5パーセントに相当する金額が控除されます。

なお、医療費控除の上限は200万円で、それ以上の費用を老人ホームで支払った場合には、その部分の金額は控除することができません。

正しい計算が必要になる医療費控除

所得税から控除できる医療費控除の金額には、老人ホームの居住者がサービスの対価として支払った食費や居住費などが含まれます。利用している施設によって控除できる金額が異なり、特別養護老人ホームなどの入居者の場合には、食費や医療費の2分の1に相当する金額を控除できます。

日常生活費や特別なサービス費用は、控除の対象外なので注意が必要です。